第16話 逃避行・追跡者・残留する意思










できるだけ急いで、だけど音はたてないように走った。
ボクはヤファを背負ったまま、大聖堂の裏手にある寮のノエルの部屋へとやってきた。
さっきと同じように足でドアをノックすると、待つ間もなくノエルがドアを開けてボクたちを部屋に引き入れ、
廊下に誰もいないことを確認して鍵を閉めた。
ベッドを見ると、レイチェルさんはまだ眠ったままだった。

「うまくいったのね。その子には何が効くのかしら。とりあえず、青っぽいものが良さそうね。ソファに寝かせて」

ノエルはヤファの様子を見てそう言った。
彼女の言うとおりボクはヤファをソファに寝かせた。
するとノエルは青いポーションをヤファに直接ふりかけた。
それにはさすがに驚いた。普通、口から飲むものだ。

「皮膚から吸収するものって、結構馬鹿にならないものよ。全身を火傷したら、死んでしまうでしょう?
ま、これはとりあえずの応急処置だけどね。青ポーションにも質があるからね。今のは安いやつ」

確かにそうだけど、この場合はどうなんだろう。
でも、ノエルのほうがずっとこういうことには詳しいだろう。
彼女は戦闘型だけど、理論的なことは驚くほど良く知ってる。
もちろん、だからこそ教育係になっているのだろう。
ボクがあれこれ考えるよりも、全部任せたほうがいい。
怪我自体はボクがここへ来る間にヒールを掛け続けていたからもう大丈夫なはずだ。










春摘みの青ハーブだけを集めてエキスを抽出したという、
教会のお抱えアルケミスト特製青ポーションを布に含ませ、
ヤファの体の大部分を覆って数分、ノエルは立ち上がって言った。

「とりあえずしばらく様子見ね。ま、この魔力の回復速度から考えて、すぐに目を覚ますと思うわ」

確かにヤファから発せられる魔力が少しずつだけど確実に力強くなっていく。

「ありがとう、ほんと助かったよ」

「どういたしまして。でも、この子がこんなにまでなる状況からよくここまで来れたわね」

「結構ギリギリだったけどね。でも、まだ安心できないよ。できるだけ早くプロンテラから離れたほうがいいと思う。
 レナが・・・どういう手を打ってくるのか、だいたい分かるけど、でももう自信はない」

「レナって、レナ?」

ボクたちの共通の知り合いであるレナかどうか聞いているのだろう。

「そだよ。レナだよ・・・」

ノエルは椅子に座り、ほんの少し何か考えるような仕草を見せてこう言った。

「・・・・・・何があったのか詳しく話しなさい。聞く権利、あるでしょう?」

つまり、レイチェルさんを預かって、今こうして部屋に居させてるんだから、ということだ。
確かに、ある。でもどちらかといえば、ボクに話す義務があるんだろう。
ノエルはたぶん分ってる。もしかしたら今結構危険な立ち位置にいるってこと。
ヤファのことも分ってるノエルだから、ある程度は予想できてるだろうけど。
でも、話そう。きっと、今、誰よりも力になってくれるのはノエルだ。








いつもどおり、ノエルはベッドの縁に、ボクは窓際の椅子に座った。
できるだけ時系列にそって、なるべく簡潔に、今日と昨日あったことを話した。
ノエルはときどき先を促すような言葉を発するだけで、黙って聞いてくれた。

「・・・・・・なるほど。じゃあ情報は本当だったのね」

「情報?」

「リオンのこと」

ノエルの情報網は昔から凄かった。どうしてそんなこと知っているのか、不思議に思ったものだ。
城内のことから地方の町のことまで色々とノエルのところには集まってくるらしい。
そしてそれはいつだって本当だった。

「ボクのせいだね」

わざわざ言葉にするまでもない。

「そうね」

ノエルはいつだってハッキリ言う。でも、ボクにはその言葉は刺さったりしない。
柔らかい剣、そんな感じだ。嘘で、そんなことない、なんて言わないから、だからノエルのことは頼れる。
優しくすることだけが優しさじゃない、か。昔、ノエルが言った言葉が思い出される。

「今のボクじゃリオンのことはどうすることもできない。だから、ノエル。リオンが出てきたら・・・」

「『今度ちゃんと謝るから、また会おう』って言ってたって言っておくわ。私は代わりに謝っておいたりしないからね?」

「うん、わかってる。必ず、そうするよ」

「えぇ、絶対ね。ま、どうせいつもダンジョン探索ばっかりの仕事なんだから、暗くてじめじめしたところには慣れてるでしょ。
あの能天気男にはちょうどいい湿度よ。どうせ今頃家のベッドと同じくらい気持ちよく寝てるんじゃないかしら」

ノエルは少し笑いながらいつもどおり口調でそう言う。

「あはは、それは言いすぎだよ」

彼女のいつもどおりのリオンを馬鹿にした言葉に笑ってしまった。

「・・・ね、リル」

だけどノエルはすぐに真剣な表情になった。

「うん?」

「しばらく戻らないつもりなんでしょう?・・・戻れない、っていったほうがいいのかな」

「うん、たぶんもうここには居られない。どのくらい猶予があるのかわからないけど、
 どんなに遅くても朝にはもうプロンテラは歩けなくなってると思う」

「そう・・・あ〜あ、せっかく久しぶりに会ったのにね。リルはさ、いつだって何処かに行ってしまう人なのね。
私・・・ううん、私だけじゃないけど、いつか貴方がずっとじゃなくてもこの町に留まって、昨日・・・もう一昨日か。
一昨日みたいに一緒に飲んだり、リオンを馬鹿にして遊んだり、そういう風になるのが今回だったらって、
思ってるのよ。でも、今回も違ったみたいね」

「・・・ごめん」

「別に、謝るようなことじゃないわ。私は貴方がしたいようにするのがいいと思う。それがどんなことでもね。
私もリオンも他のみんなも、貴方がまた厄介なことを抱えて帰ってくるのを待ってる。だから、忘れないで。
思い出して。いつだったか、約束したこと。何があっても生きて、帰ってくること。どんなことでも協力するし、
きっと何をしても許すけど。死ぬのだけは絶対に許さないから」

「うん、大丈夫。ボクは死んだりしないよ。果たさなくちゃいけないことがあるから」

ノエルはじっとボクの目を見ていた。
彼女の目には力がある。それは意志の力だ。決して折れないグングニルのように相手を貫く。
この国では、誰かを挫く事、負かす事が不可能な事を『槍を折る』という。
ノエルの槍を折る。それはこの世界でもっとも不可能な事の一つだ。


数秒、ボクの意志を確認するようにじっと見つめて、納得したのか、視線をはずした。

「わかってるならいいわ。さて、それじゃああまり悠長にしてられないわね。夜明けまでに準備を整えて脱出のルートも考えないと。
で、ヤファと・・・レイチェルだっけ?起きたら着替えてもらって、あ、服は貸してあげるわ。リルもその聖衣はカバンにしまったほうが
いいわね。着替えくらい持ってるでしょ?なんだったら私の服着てみる?女装してれば門から出ても気づかれないかもしれないし。
あはは、我ながら名案ね。ウィッグつけて、ってリルの髪の色のはなかったわ」

「いやいやいや、ホントそんなことするくらいなら強行突破するから」

「そう?残念。そうね、じゃあ・・・」

何を考えてるのか分からないけど、ノエルは唐突に思考モードに入った。
拳を作って人差し指を唇に当て、人形のように動かなくなる。目を開いたまま眠ってるんじゃないかと思ってしまう。
だいたいいつもだと1分くらいその状態が続く。今回もだいたいそのくらいだった。

「馬鹿っ!」

突然ノエルが叫ぶ。

「何、急に・・・」

「まずいわね。眠くて思考が8割くらい落ちてた。宿のほうはとっくに押さえられてるから、次に来るのはここしかないじゃない。
私のところか、マナのところに最初に来るはず。追っ手を差し向ける気なら、もう・・・」

ノエルの妹のマナちゃんは現在はアコライトの修行中だ。昨日も会ったのだから確実だけど、この宿舎に住んでいるはずだ。
そして、マナちゃんはプリーストになったボクの教え子でもある。
プリーストとして認められると、まずアコライトの一人の師となる。つまりプリーストとアコライトの師弟関係が結ばれる。
これは現在の教会のシステムとして基本的かつ絶対的なもので、極々一部の例外を除いてこのシステムをとっている。
ただし、実質としての師弟関係があるかどうかは最近ではかなり微妙だ。地方での実戦での経験値の取得を期待しているシステム、
であるのにもかかわらず、プリーストになって書面上の師弟関係を結んだだけで、実際は何も教えないプリーストが多くなっている。
そしてボクもそんな困ったプリーストの一人だ。実際、最初の2週間だけの師弟関係だった。
ボクが旅に出て、マナちゃんを連れて行かなかったからだ。
だけど、書類上は師弟関係。だとすればマナちゃんのところへ最初に追っ手がかかる可能性はある。
同期のノエルも同じ宿舎なのだ。一石二鳥だろう。

「レナもルーシーズさんも知ってるはずだから。だから残り時間はもうないよ」

ノエルの方、つまりここに来る可能性は考えていたけど、マナちゃんの方には気が回らなかった。
確かに客観的に見ればもっとも近しい人間の一人だろう。
それほどボクが焦ってなかったのは、どっちにしろヤファの回復を待たなくちゃいけなかったから。
レイチェルさんもいるから、どんなに焦っても時間はかかる。
もし、朝を待たずにここへ騎士たちが来ることになっていたら、一人で時間稼ぎをして、
ヤファとレイチェルさんのことは、とりあえずはノエルに任せるつもりだった。
もちろん、これ以上巻き込むつもりはなかったけど、状況はボクたちに有利ではないのだ。


「そうね、正式に捜査の許可を得る最短時間は・・・あと10分くらいかしら」

ノエルがすぐに追っ手がかかると判断した以上、それはきっと間違いない。
ボクは基本的には楽天家で、もう後数時間は余裕があると思っていた。

「この時間だからね。もうレイチェルさんには起きてもらわないと。ヤファは・・・うん、魔力もほとんど戻ってる」 

「白銀が本当にリルを捕まえる気なら、もう居場所はわかってるわね。急ぎましょう」

白銀というのはルーシーズさんのことだ。こういう単純な色だけの二つ名は主にプロンテラ大聖堂のプリーストたちに
与えられることが多い。白や青に近い色ほど神聖であると考えられている。黒や赤はその逆だ。

「ごめんね、起きてる」

突然、レイチェルさんが身体を起こした。

「起きてたんだ。じゃあちょうどいいや。ノエル、レイチェルさんの着替え手伝ってあげて。
なるべく目立たない服よろしく。事情は後でゆっくり話すから」

「・・・寝たふりなんて趣味が悪いわね。貴女、どういうつもり?」

ノエルが少し怒ってる。椅子から立ち上がってレイチェルさんの目の前にたった。
ボクは気にしないタイプだけど、ノエルは女性にしては珍しくそういうことは許せないタイプだ。

「ごめんなさい。真剣な話だったから邪魔しちゃいけないと思って。代わりって言うのもちょっと違うかもしれないけど、
状況を把握しておきたかったから。眠ってる間に違うところに来てたみたいだからびっくりしちゃったけど、この近くを
『視て』おいたよ。今、ちょうど聖堂の前に20人くらい人が集まってきたところだよ。だからたぶん時間はないと思う」

彼女は『視る』と言った。能力を使ったのだろう。
だから眠っている振りをしていたのかもしれない。

「そう、便利な眼ね。私は貴女のことを全然知らないし、もちろん名前は知ってたけどね。有名だから。でもまぁ、話聞いてたなら
ちょうどいいわ。状況は結構切迫してるけど、言っておかないといけないことがあるの。レイチェル、視力のない貴女を連れて
旅をするのは正直賛成できない。でも、リルが決めたことだから、私は協力する。でも、この先は誰の助けもないのよ?」

「・・・・・・うん、分かってる、よ」

「本当に?私はいたって普通の人間だから、貴女の苦労はわからない。でも、想像だけはできる。
もし、私が貴女だったら、きっとリルと一緒にはいかない。私は絶対に人に頼りたくないの。
それが私の悪いところ。でも同時にそれを自分自身誇りに思ってる。貴女は私と違って普通の人間なんだから、
だから・・・リルに全て頼りなさい。たぶん、貴女の目を見えるようにしたいと思ってる。
だからそれまで今みたいに『視る』のは控えなさい。その能力が貴女から視力を奪ったんでしょう?
だったら、簡単に使ったりしないで。いい?約束できる?」

「うん、約束するよ。できることはするけど、できないことは頼る。でも、どうしても必要になったら使ってしまうかもしれない。
それは許してね?リルくんとノエルさんの約束が守れるようにすることも、私は約束したい」

「えぇ、お願いね。無茶しないように見張ってて。それじゃあ、急いで支度しましょう。もう脱出方法は考えてあるわ」

そういってノエルはにっこり笑った。













「ヤファ、起きれる?」

ボクの声にヤファの大きな耳が反応した。
ゆっくりとまぶたを開ける。もう大丈夫そうだ。

「リル・・・わたし、どうして?」

「お城にさ、連れて行かれたんだよね?ごめん、もっと気をつけてればこんなことにならなかったのに・・・」

「そっか。レナが迎えにきて、それで一緒にお城にいって。わたし、楽しみにしてたのに、怖い人がいっぱいいて、
わたし何もしてないのに、逃げようとしたけど、気づいたときにはもう何もできなくなってた。でも、生きてるね。
ありがと、リル。ずっと呼んでたの。やっぱり来てくれたね」

「・・・遅くなってごめん。でもまだ安心できる状況じゃないんだ。ここから逃げなくちゃいけない」

「そっか、じゃあ行こう?わたしもう大丈夫」

「うん、よかった。それでね、この人がレイチェルさん。これからは一緒に旅をする仲間だよ」

着替え終わって、ボクの横に立っていたレイチェルさんを紹介する。
話だけはしてあったけど、二人が顔を合わせるのは初めてだ。当たり前だけど。

「ほんと!?そっかー、よかったね。リルに助けてもらったんだ?」

「うん、よろしくねヤファちゃん」

「まっかせてー、大変なときはわたしに乗ればいいよ」

「乗るって?」

「乗る?」

レイチェルさんと同時にその意味を問う。

「うん。ホントはね、死んでも元の姿になんか戻りたくないって思ってたんだけど、もういいやって。
そんなことたいした事じゃないってわかったから。元の姿に戻ればね、人一人くらい乗せて走れるよ」

「元の姿って・・・」

「バッサリ整理すると、ヤファは今の姿と狐の姿の二つになれるってことね?」

ヤファの言葉をノエルがバッサリ整理した。なるほど、つまり例えるならペコペコのようになれるのか。

「そうだよー。気分的にずっとは嫌だけど、きっとね、わたしがレイチェルの乗り物になったほうが
いろいろ便利だと思うよ。それで、それはきっと今なんだと思う」

「・・・わかった。うん、それができるならそうしよう。ヤファ、レイチェルさんの目と足になってあげて」

一度人間に近い姿に変化することを覚えた動物や一部の植物たちは、二度と元の姿に戻ろうとしない、そう聞いたことがある。
ヤファも自分で言ったことだから間違いない。でも、ここはヤファの提案に感謝して元の姿になってもらうほうがいい。

「りょーかい。でもね、外に出ないと変われないから、窓から出るね」

そう言って窓を開けて、服を脱ぎだした。

「って、ちょっと待った・・・」

「リル、服を着たままじゃ破れるに決まってるじゃない。はい、これはカバンに入れて。せっかく脱出方法考えたのにね。
 ま、こっちのほうがいいかしらね。ルートだけはどっちにしろ一つしかないけどね」

ノエルは当然のことのようにヤファの着ていた服を受け取って、ボクに渡してきた。
そりゃそうか。だけど、いきなり脱ぎだすのは困るな・・・

「ところで、城門を通らないで外に出るルートって?」

「えぇ、それは簡単」

ノエルはにっこり笑いながら一つの鍵を懐から取り出した。



















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リルたちが窓から飛び出して行ったすぐ後、部屋のドアを誰かが叩いた。
無粋なその叩き方は腕力を仕事の道具にしている人間のそれだった。
恐らくは王城警備隊。つまりは第一騎士団の騎士様のご到着というわけだ。

今頃三人は意外と盲点なルート、つまりは地下水道を走っていることだろう。
実は、この宿舎の中庭の隅にある小さな建物から地下に潜れるのだ。
その建物の扉は物理的にも魔術的にも施錠されている。
だから、普段は決して開かれることはない。
もちろん鍵はある。たった一つだけ。
そしてそれはずっと私が持っていた。

私は一瞬部屋を見渡し、いつもどおりの状態に戻っていることを確かめてドアを開けた。

「夜分恐れ入ります、ノエル・プリエット様のお部屋で合ってますでしょうか」

分かっていてドアを叩いたんでしょう、と言いたくなったけど、その低姿勢に免じて素直に答えた。

「えぇ、判っていて訪ねてきたのでしょう?こんな時間に、普通ならもう寝ているところだわ。運が良かったわね」

素直にこんな風に答えてしまった。しまった、というよりはこれがいつのも私だったりする。

「は、はい。申し訳ありません。大変失礼ですが、お部屋のほうを検めさせていただきたいのですが・・・」

「へぇ、私の部屋を?貴方が?どんな権限があるのかしら。貴方、私に名前を聞いたけれど、私は貴方のことを知らないわ。
 もしかして聖職者風情には教える名前はないの?それともそういう風に騎士団では教育してるのかしら?」

「い、いえ。重ね重ね申し訳ありません。私は・・・」

「ルーシーズ・フォルセティよ。初めまして、ではなかった気がするけれどね、ノエル」

突然、目の前に立っていた騎士と入れ替わるようにその女は現れた。
ただ単に廊下と部屋にまたがって立っていた騎士を廊下側に引っ張り、その代わりに部屋に入ってきただけだ。
それにしても・・・

「そうね、フォルセティさん。この町で貴方のことを知らない人間は存在しないと思うわ。
 それで、その御著名な貴女がどうしてこんな時間に私の部屋へいらしたのかしら?」

彼女はリルがここに来たことを確信している。私に負けず劣らずの自信に満ちた目がそう物語っていた。
だけど、どうして彼女自身がここまで来たのか、わからない。

「もしかしたらアナタの所に誰か訪ねてきたのではないかと思って」

「えぇ、昨日旧友と会った気が・・・そうそう、確かネンカラスの酒場で一緒に飲んだわね。結構大勢で」

「それで、今日も来なかったかしら?」

「いいえ、今日は誰にも会ってないわね。私も忙しかったから」

「そう、それならいいのだけれど。アナタの友達ね、賞金首として指名手配されることになったのよ」

やっぱり、それくらいはするだろう。罪状も想像はつく。リルに言っておくのをついつい忘れてしまったけど、
恐らくそこそこ大きな賞金が設定されることになる。もちろん、死んでいるよりも生きたままのほうが数倍高いはず。
だからできるかぎり生きたまま捕らえようとする人間が多い。特に素人は。
防御に特化したプリーストを生きたまま捕獲することの難度は実はあまり知られていないのかもしれない。
プリーストが賞金首になることなんて普通はないのだからしょうがない。

「へぇ、私の友人には賞金首になるほど馬鹿な人間はいないと思ってたのだけれど」

「朝になれば町中に張られることになるから、そうしたら否が応でも事実になるわ」

「あ、もしかしてリオン?アレは根本的に馬鹿だから。他には思い浮かばないし」

「あらあら、そこまで言っては可哀想よ。彼は彼で努力しているのだから。さて、あても外れてしまったことだし、
 今日はもうお暇するわ。ごめんなさいね、てっきり貴女のところに来ていると思ったのに。私もまだまだね」

「一応友人は多いつもりだし、私のところへ来たのはあながち間違いでもないんじゃないかな」

「そう?それなら次にこんな機会があったら、また貴女のところへ真っ先に来ようかしら」

「えぇどうぞ、お待ちしてます。力になれるかどうかはわからないけど」

「それじゃあ、おやすみなさい。近々また情報をいただきに来るわ」

「たいした情報もなくて申し訳ないですが、いつでもどうぞ」

「いいえ、今日は十分収穫がありました。では、ごきげんよう」

「・・・おやすみなさい」

わかってる。ただ単にリルがここに居た確認に来ただけのことくらい。
その確証は得られたのだろう。いくらごまかしても残り香は消しきれない。
こと「探索」系統においては郡を抜いている彼女のことだ、いくらとぼけても無意味。
まったく、嫌な女だこと。

でも、ならどうしてわざわざ来たのだろう。
いることがわかっていたなら、もっと早く来れたはず。彼女の権限があれば手続きをいくつか省略できる。
そもそも、もういないことくらいわかってたはず。ヤファの魔力は出て行くときには全く隠していなかったのだから。
・・・捕らえる気がなかったとしか、考えられない。なら、どうして懸賞金を?
もっとはっきりした人間だと思っていたけど、意外と矛盾だらけなのかもしれない。
そういう人間も嫌いじゃないけど、彼女とは表面上の付き合いしか今のところない。

そういえば、彼女もフェイヨン出身だったような・・・
だったら、もしかするともしかするかもしれない。

「・・・・・・まさかね」

頭に浮かんだことを言葉に出して否定する。だけど思考まで否定しきれない。
私はプロンテラ生まれのプロンテラ育ちだからうまく理解できないけれど、
フェイヨンという場所はルーンミッドガルド王国にあって、少し異色だ。異常といってもいいかもしれない。
だけど、あの女がそういう種類の人間には思えない。

昔から「フェイヨン一家」とか「フェイヨン家」とか、そういった類の言葉があった。
フェイヨンに住む人間は須く「家族」である、ということだ。
この言葉はたぶん正確ではない。
「同志」とか「仲間」とか、そういった言葉を合わせたような意味だったはず。
でもやっぱり「家族」が一番近いのかもしれない。
あらゆる利害を超えて助け合うことが暗黙の了解となっている。
曰く、「フェイヨンには手を出すな」
そんな言葉がほんの少し昔まではこの国では当たり前だった、らしい。

今はどうなんだろう。
現在ではフェイヨン出身の人間もプロンテラ人口の1割を超えている。
フェイヨンの人口から考えれば、その殆どが移住しているということだ。
その文化は少しずつ薄れるとともに、確実にこの国に広がっている。
反対にフェイヨンの過疎化は進み、本当の意味でこの国に溶け込んでしまっている。
ルーンミッドガルド王国はいくつかの小さな国家を統合した国だ。
プロンテラを中心として、旧モロク王国、フェイヨン王国、魔法都市ゲフェン。
それぞれが一つの国になったのはずっと昔。私たちが生まれるずっと前。
その中でフェイヨンだけは、静かにその存在を主張し続けている気がする。
沢山のものを受け入れながらもなお、確固たるその存在。
目に見える形ではない部分で、もしかしたら今も、成長し続けているのかもしれない。

「ストップ」

この考えはとりあえず保留。今はフェイヨンのことは重要ではない。
考えるべきキーワードの一つでしかない。

私は常に収集し続けてきたあらゆる情報の整理を始める。
リルの今回の件はもしかしたら大きな動きのきっかけになるかもしれない。


まず、一番大きな問題はルミナ派とレナ派の対立。これは水面下で着実に進んでいる。
ありとあらゆる方面からの情報を統合して個人的に推理した結果、対立の構図がおぼろげながら見えてきた。
ルミナ姫、第一騎士団隊長シオンと第五騎士団を中心としたルミナ派は少数。
だけど数以外のあらゆる面でレナ派に勝る。
レナ派は正しくは大臣派。
レナと彼女を裏で操る大臣たち。数の上で圧倒的有利。
第二から第四までの騎士団を懐柔、クルセードや教会の一部も彼らの力が及んでいる。
他の細々とした団体もレナ派といってもいいかもしれない。
何を考えているのかわからないルミナ姫と大臣たちのいいなりのレナ。
噂では、アルナベルツ教国とつながりがある大臣がいるらしい。
これは未確認情報だけど、個人的には信憑性は高いと思っている。


次にモロク派の暗躍。これは小さいながらも危険な派閥だ。
経済的な問題でプロンテラとモロクは対立している。
いや、つい最近対立し始めた。
本当はこの問題は解決しているはずだった。
もうずっと昔、アルベルタのエディアール家の長女、リスティア・エディアールが作った、
といっても過言ではないモロク-アルベルタルート。これは物資輸送ルートであり、
実質モロクへの経済援助で、確か6、70年くらい前に整ったものだったはず。
この経済援助をとある大臣が凍結させる方向で動いている節がある。
これも未確認情報ながら、可能性はある。
ただし、リスティア・エディアール、つまり「マザー・リスティア」はご存命で、
彼女がいる限りは絶対に実現されない。彼女自身は特に地位のある方ではない。
でも、彼女を敵に回すということは、この国の教会に携わるものたちを敵に回すのと同義なのだ。
そして彼女がいる限り、モロク派も同様に離反することはないはず。
彼女はモロクとプロンテラを結ぶ架け橋であり、かすがいであり、不文律なのだ。

だけど、もしこの国を崩壊させることが目的なら、実現すれば確実な波となるのは確かだ。



とりあえず、私の力ではどうしようもないことはこの二つだろう。
そして、私個人の予想としては、この二つが実際に起こるとすれば、近々起こる可能性が高い。
直接関係がないように思われるあらゆる小さな情報を全て合わせて考えると、
決して油断できる状態ではない。

だから、決めておかなくてはいけない。
いざそれが起こったときの私の立ち位置を。
教会の一人として中立の立場を貫けるならそれもいい。
教会が中立を保てるなら。
それとも、リルを追いかけて気ままな旅でもしようか。
・・・それは無理だ。リルと私の立ち位置は同じ場所にならない。
彼には彼の通る道が、私には私の通る道があり、
そしてそれが交わる場所はずっと未来にある気がする。


予想される対立の構図、その一つ一つにいる自分を想像する。

『ルミナ派』
私の認める人物の一人、正当なる王位継承者ルミナ姫。その守護者たるシオン・エリム・シュベルトライテ。
五大貴族の一つ、フォートナム家のレオン・フォートナム。ついでにその長男であるお馬鹿なリオン。
そして彼らの第五騎士団の騎士たち。
ここにいる自分はきっと素の自分に最も近い。少数精鋭は私の好きなものの一つだ。
ただ、私には守るべきものがある。それらを捨てなくてはここにはいられない。
だけど捨てるにはあまりにも私に深く根付きすぎている。
家族を捨ててまで守るべきものを、私は知らない。


『レナ派』
第二皇女レナ。大臣たち。ルミナ派以外の全ての騎士団、聖十字騎士団、フリーナイトたち。
数多くの冒険者たちも恐らく結果的にここに与することになる。
ここで脅威になるのは数だけだ。そしてそれは何よりもやっかいな問題である。
自分からは一番遠い位置にして一番安全な位置。
一番簡単に守るべきものを守れる反面、私が一番居たくない場所だ。


『モロク派』
シーフ・アサシンギルド。それにモロクを拠点として活動している人間たち。
ローグたちもここに参加すると予想される。
私には全く関係ない。ここに属することは生涯ないだろう。


『カピトーリナ修道院派』
通称モンクギルド。ルーンミッドガルド王国にあって、実質中立の立場をとり続けている集団。
ここは面白い。所属しているモンクたちとの情報交換をしているのは私くらいだろう。
私の予定ではリルたちはここの世話になることになっている。
個人主義の彼らは、結果的に国から離反することになったリルたちを仲間に引き込むだろう。
はぐれ者を好むという異常な集団だからこそ、あの三人にはちょうどいいと思う。
リルには北東へ逃げるように言ってある。別に私のモンクの協力者に話を通してあるわけじゃない。
ただ、そうなる可能性を高くしているだけだ。
だから私の身辺を調べても、そこへ行ったという可能性が突出して見えたりはしない。
客観的に見れば、他の可能性と比べて同程度か少ないくらい。
私がここに・・・居ることになったら面白いと思う。でもきっと何も守れなくなる。







「姉さん、起きてますか」

遠慮がちなノックとともに私を呼ぶ声が聞こえた。
そこで思考は中断。だけどちょうどよかった。
マナが何か行動を起こすなら、それを後援するように動くのが私にとって一番だから。

「入って。鍵は・・・掛け忘れてるから」

フォルセティが帰ってから鍵を掛けるのを忘れていたことに気づいた。
そもそも鍵を掛ける習慣は本当はないのだから仕方ない。

「はい、お邪魔します」

まるで夜の衣、といったような服だった。
まぁ夜だからいいのだけれど、まるで音に聞く忍びのようだった。
これが私服なのだから、もう少し女の子らしくなって欲しいものだ。

「来たの?」

「あの、フォルセティ様が。今さっき来て。でも寝ていたので・・・」

「寝ぼけて対応してるうちに帰ったわけね。私のところへ来た後だから寄っただけだったんでしょう」

「姉さんのところにも?」

「えぇ、だから来たんでしょう?」

「いえ、なんとなく、です」

なんとなく、か。ま、そのなんとなくがマナの行動原理で、大概プラスの行動なのだから面白い。
もし私が寝るまでに来なかったら話さなくてもいい、と自分で決めていたので来た以上話すことにする。
仮にも師と呼ぶこともできるリルのことだから。
どうせ朝には知ることになるだろけど、私が適当にオブラートに包みながら多少の嘘も交えて伝えるほうがいいだろう。
朝起きて賞金首に自分の師の名前が挙がっていたら、ショックでそのまま旅に出てしまうかもしれない。
もちろん、リルを探す旅だ。私はこの子をショックで寝込むような人間に育てた覚えはない。









「・・・そんな」

私の多少オブラートに包んだ言葉を、信じられない、といった顔で聞いていた。
とりあえず、リルが賞金首になり、事実上国と教会から離反する結果になったこと。
そこにいたる事情はところどころ省いた。
別にすべてを知る必要はない。そう判断した。

「朝になれば、事実だって分かるわ」

あの女もこう言っていた。

「姉さん、どうしてですか?わたし、そんなこと信じられません」

「・・・貴女は父さんや母さん、私とリルから何を教わってきたの?」

「え?」

「ま、しょうがないわね。たった二週間だったものね、リルに教えを受けたのは。今は私から授業を受けているけど、
でもそれは大勢の生徒の中の一人でしかない。父さんと母さんも貴女には甘かったし。師弟関係って言っても書類上だけ。
姉妹といっても血縁だけ。親子と言っても甘やかされただけ。そういうことよね?」

「・・・・・・違う・・・違いますっ!わたしは、リルさんにも姉さんにもお父さんとお母さんにも沢山のことを・・・」

「だったら、分かるでしょう?」

「・・・・・・・・・」

「リルが貴女に教えた二週間。それは短かった?」

「・・・いいえ、本当は一日でも早くお姉さんを探す旅に出るはずでした・・・それを」

「貴女のために二週間も割いてくれた。そしてそれは一年に勝る二週間だったはず。違う?」

「わたしにとっては、何年分もの価値がありました」

「父さんと母さんは、甘やかしただけだった?」

「いいえ、わたしに、優しく接することだけが優しさじゃないことを教えてくれました」

「私が授業の中で言葉にしないときもずっと言い続けてきたこと。伝わってる?」

「はい、自分自身が納得できるまで努力をして、自分の大切なものを守るために、戦い続けること・・・そして」

「そして?」

「大切な人を信じること」

「よくできました。貴女の大切なもの、貴女の守りきれないものは私が代わりに守ってあげる。
だから、マナはマナの一番大切なものを守るために、信じるために、自分の戦いをしなさい」

「・・・ありがとう。姉さん」

「どういたしまして。さて・・・」

私は立ち上がり、マナと正面から視線を合わせた。

「?」

「マナ・プリエット」

「え?・・・はい」

「少し早いですが、貴女の卒業試験の内容を言い渡します。いいですか?」

いわゆる先生モード。これからマナに言うことは、はっきり言って色々問題がウンザリするほどある。
でも思いついてしまったのだから、しょうがない。

「卒業?」

「本日より来年の4月1日までにリル・ローゼリアという賞金首を捕らえ、私に引き渡すこと。
 これを卒業試験の課題とします。ただし、必ず生きたまま連れてくること。騎士団には受け渡さないこと」

毎年の卒業試験は私たち教官が個別に生徒に言い渡すことになっている。
といっても、基本的には数人を一まとめ、つまりパーティを作らせて一つの課題をクリアしてもらう。
だけど、毎年数人は個別により高度な課題を課される。マナには荷が重いかもしれないけれど、
この先のことを考えるなら、今、経験をできるだけ積むべきだ。

「え・・・え??」

マナはよく理解できていないみたい。それもそうだ。卒業試験自体年を越すような時期から始まることはない。

「なお、4月1日に間に合わなかった場合、私が課題の進行具合を確かめに行きます。よろしいですね?」

「あ、はい、必ず来年の4月までに課題を完了します」

「時間はたくさんあるから、焦らずに、がんばって」

「はい」

「そうそう、それと、課題は3人以上のパーティを組むことから始めること。午後のネンカラスの酒場あたりが質のいい
冒険者を探しやすいから、できればネンカラスで探すように」

「・・・本当に課題みたいです」

「だから、課題なのよ」

「そうでした」

課題という言葉を使うのは一般的ではない。誰にでも分かる一般的な言葉でいうなら「クエスト」だろう。
草むしりからモンスター退治、果てはちょっと危険なお使いまで、多種多様なクエストがある。
主に酒場、斡旋所、騎士団本部、それと教会で受けることができる。
授業の実技でもこれを課すことがある。これが結構面白い。
授業の課題は基本的に教官が自由に決めることができる。
私の最近の楽しみは、アコライトたちにうまくやればギリギリで達成できるような課題を課すことだったりする。

マナに課した卒業試験の課題は・・・マナだけでは達成できないと判断した。
そもそもマナに課したような課題では、アコライトである時点で協力者が絶対に必要になる。
その協力者をいかにうまく見つけるか、それもいわゆる「支援職」には必要な能力なのだ。

「それじゃあ、もう寝なさい。課題を始めるのはいつからでもいいから。でも必ず私に報告してから出発すること、いい?」

「はい。明日はネンカラスに行ってみます。あ、でも・・・明日からの授業はどうしたら・・・」

「何言ってるの。今やってる講義なんてもうマナには必要ないでしょう?」

「・・・でも」

「デモは騎士団によって鎮圧されました」

「・・・わかりました。おやすみなさい、姉さん」

「おやすみ、パーティを組むときは相手を十分観察してからね。それと・・・」

「姉さん、仲間選びも課題の一部、ですよ」

「・・・そうね、それが分かってればいいわ」

十分すぎるくらい自分でも分かっている。言われなくても。
なんだかんだで一番マナを甘やかせているのは私っていうことね。







こうして、私の思い付きによって、マナはリルたちを追いかけることになった。
明かりを消して、ベッドに潜り込み月明かりの天井を眺める。
そもそもどうして私はマナにリルたちを追いかけさせるようなことをさせるのだろう。
マナを最初から私の部屋に呼んでいたらどうなっていた?
同行を許さないであろうことは簡単に想像できる。
ほんの少しのすれ違いでずいぶん変わってしまったものだ。

自分は自分が思っている以上に複雑にできているのかもしれない。
だから単純なほうへ流れたくなる。それともそれは逆?

月明かりがあるとはいえ、暗闇の中では自然と目蓋が落ちてくる。
今日考えることはもうない。残りは明日。
私は敵わない敵とは戦わない。
特に、天敵の睡魔とだけは・・・









一瞬で朝になった。
目を開けると珍しくマナが私を起こしに来ていた。
なるほど、夢の中でやたらと呼ばれていたけど、ずっと起こしてくれたいたみたい。

「それじゃあ姉さん、わたし行きます」

まだ朝だというのにもう行くのかしら。
見れば荷物はそれほど多くはないけれど、マナには似合わないごつごつの武器が腰に納まっていた。

「え、あ、そう。行ってらっしゃい。課題がんばってね」

「はい、姉さんも朝起きるのがんばってくださいね」

「その言葉、そのままマナにお返しするわ」

「それじゃあ、お互いにということで」

「えぇ、気をつけてね」

「はい」

そうしてマナは部屋から出て行った。
私は時計を確認して、いつもより余裕がほんの少しだけあるのを確認し、
服を着替えながら窓を開けた。

ほんの少し前までは朝でも空気は熱を帯びていた気がしたけど、
今日はとても気持ちのいい空気が部屋に迷い込んできた。

その風に髪を流し、ぐっと伸びをする。

「リルたちは森の辺りかな」

窓のある方角とは反対側なので、そちらの空を窺うことはできない。
太陽は夏の終わりの様相を見せ始めている。
もうすぐ秋。
その抽象的な季節が私は好きだった。

しばらく窓際にいると、教会の鐘が聞こえてきた。
今日もちゃんと当番の子は時間を間違えなかったらしい。
きっと、こうして私の日常はもうしばらくだけ続いていくのだろう。

今はまだ穏やかに過ごすことのできるこの日。
背後から忍び寄る不穏な足音に気づくのはもう少し後にしよう。
どうしてか、もう少しだけこの日常を守りたくなった。
やがて訪れる大きなうねりに飲み込まれないように。
私は私の守るべきものを守る。
いつだったか、もうずっと昔、
私は、私自身にそう誓ったのだから。