side Ruri 〜Don’t open your eyes,〜







いくら揺すっても、リルは目を覚まさなかった。
話してれば大丈夫だって言ってたのに、どうして、どうして?
そうだ、そういえば、リルが眠ってしまう前に言っていた。
トウシ、寒いと死ぬ…
…人間は寒いと、死んじゃうの?
わたしがが近くにいればいるほどリルの体は冷えて、
それでリルが死んじゃう…

「そんな…」

わたしが…馬鹿だった…わたしのせいで…
人間と遊んでみたいなんて、考えなければよかった。
わたしは人間とは違うんだから。
わたしは…雪女なんだから…

でも…

「待ってて、絶対助けるから…」

わたしは決心して洞窟の奥へと走った。
たしか奥に乾いた木の屑と使い古された服があったはず。
突き当たりにそれはあった。わたしは持てるだけ持ってリルのところに戻った。
ときどきこの洞窟に来ていたわたしは、奥に人間の残していった物があることを知っていた。


人間の残していった物…たぶんこれで火を焚けば…
前にどこかで見たことがある。
この小さな箱に入ってる「マッチ」っていうもの
たしかこれで火がつけられたはず…

「待ってて…絶対待ってて…すぐに暖かくするから…」

マッチの中にはたくさん小さな棒が入っていた。
最初はわからなかったけど、この赤いところを箱で擦ると火がつくみたい。
でも、うまくできなくて、結局ほとんど使い切ってやっとつけられた。
よかった、服はよく燃えるみたい。
でも放っておくとすぐ消えちゃいそう。
どんどん燃えるものを足さなきゃいけない。



それからわたしは燃えそうなものがなくなるまで何度も何度も往復した。
あまり沢山火の中に入れても意味がないことに気づいたわたしは、
目の前の火が消えないように少しずつ服や木の枝を足していった。

火の近くにいると自分の体から水が出て行くのがわかる…
溶けてるんだ…わたし…

「熱い…熱いよ…でも、きっとリルの『寒い』と同じなんだよね?」     

わたしは壁にもたれて眠るリルの姿をみた。
リルの様子を近くで見たかったけど、わたしは近づいちゃいけない…
もう、足も溶けてしまったから、歩くこともできないけど。
もしかして話してたら、目覚ましてくれるかな…
そう思って、眠るリルが聞いてないことは分かっていたけど、
ううん、分かっていたから、わたしはリルに話しかけた。


「ねぇ、こんなに辛いなんて…知らなかったよ」


体が溶けていく…


「ごめんね、絶対助けるから」


火が消えないようにがんばるから


「目を覚まして…」


でも、できたら、私が溶けてなくなるまで





「目を覚まさないで…」















続く